カトリック 英神父の説教集 ○キリスト教のおはなし○

☆。・:*:・゚☆。・:*:・゚☆。・:*:・゚☆イエズス会 英隆一朗司祭の福音朗読 ミサ説教 講話などの公式ブログです☆。・:*:・゚☆。・:*:・゚☆。・:*:・゚☆

20151115苦難の果てにも滅びないもの

英神父 ミサ説教                         聖イグナチオ教会於

マルコによる福音書 13章24-32節〈そのとき、イエスは弟子たちに言われた。〉「それらの日には、このような苦難の後、 太陽は暗くなり、月は光を放たず、星は空から落ち、天体は揺り動かされる。そのとき、人の子が大いなる力と栄光を帯びて雲に乗って来るのを、人々は見る。そのとき、人の子は天使たちを遣わし、地の果てから天の果てまで、彼によって選ばれた人たちを四方から呼び集める。いちじくの木から教えを学びなさい。枝が柔らかくなり、葉が伸びると、夏の近づいたことが分かる。それと同じように、あなたがたは、これらのことが起こるのを見たら、人の子が戸口に近づいていると悟りなさい。はっきり言っておく。これらのことがみな起こるまでは、この時代は決して滅びない。天地は滅びるが、わたしの言葉は決して滅びない。その日、その時は、だれも知らない。天使たちも子も知らない。父だけがご存じである。」十

   この11月の半ばにくると、福音朗読も世の終わりが朗読されるようになります。クリスマス前のカトリックの年間カレンダーの最後の方に、11月のこの時期は秋が深まってくる、その季節に合わせてという感じもしますけれども、この世の終わりのようなところが朗読され、そしてわたしたちも思いを馳せるというか、そのことを振り返るように呼びかけられているかと思います。
それらの日にはこのような苦難、それは戦争であったり地震であったり、さらに天体がおかしくなるような、一種の天変地異が起こっています。そのようなことが起こったあとに、イエス様が天から再臨されると言っているわけです。この世の終わりということはわたしたちの普通の考えでいうならば、だんだんと良くなって、だんだんと完成して、そして神の国が最後に完全になる、というふうに考えているところが多いと思います。
積み上げ式というか、だんだん世の中が悪くなってきて、最後に神様の力が働く、と書いてあります。このようなことは、わたしたちも何か考えさせられるような気もします。
わたしたちの人生、生活、社会というのも、うまくいっているようでうまくいかないように、さまざまな困難に遭遇するわけです。そしてそのようなことがあるにも関わらず、神様の偉大な力が働くんです。何か行き詰まったり、うまくいかなかったりする。その中でこそ、神様の大いなる力が働くということを言っているわけで、一種の希望を、わたしたちに与えているのではないかと思います。
今日は特にフランスでテロがあったので気分が重いですが、個人においても社会においてもさまざまな苦難や苦しいことがある、でもそれをわたしたちが、しっかりと受けとめていく中で、神様が働いてくださると信じて歩んでいくかどうか、ということが大切なような気がします。
宮崎駿監督の「ハウルの動く城」というアニメーションがあって、ハウルという魔法使いとソフィという女の子が出てくる、素晴らしいお話なんですけれども、そのソフィが帽子屋さんで働いていたんですが、魔法に巻き込まれてしまって呪いがかけられてしまったんです。17歳位の女の子が老婆の姿に変えられてしまう。がっかりするかと思いきや、魔法を解いて何とかしようという気になって、魔法使いのハウルに一度助けられているんですけれども、ハウルともう一回出会って冒険が始まります。その登場人物が何人か出てくるんですが、彼女が本当の意味でハウルを愛していて、一生懸命活躍しますが、最後にほとんどの登場人物に呪いがかかっていることが分かって、最後の最後にソフィの力のおかげで全員の呪いが解けていくというんです。最後の方には、かかしは呪いがかかった王子と分かって、ハウルと火のカルシファーもかけられていると分かって、それを最後に全ての呪いがとけるんです。
でも不思議なことに他の登場人物は全員何かの働きによって呪いが解かれるんです。唯一自分で呪いを解いたのが、作品の中で出てきて、それはソフィーなんですね。最初は老婆だったんですけれども、頑張るうちに段々と自分の中の呪いが解けてきて、彼女だけは自分で呪いを解くんです。他の人はソフィーや他の人の力で解いてもらう。
なんでソフィーは自分で呪いを解けたのか。やはり愛するということを徹底して生きたから、呪いとか苦難とかありながらも、全然ぶれずに愛を徹底して生きていくということの中で、結局全ての呪いや苦難が溶けていくようなストーリーになっています。
ソフィーというのはギリシャ語で知恵という意味ですけれども、彼女が本当の知恵と、愛を持っていたので、自分の呪いだけではなしに、人の呪いも全部解いてしまうというお話なんです。
様々なテロ事件をみても、呪いのような変なものに振り回されているものがあるかもしれない。わたしたちの生活の中にも、捕われとか様々な苦しみに振り回されたりするものがあるかもしれない。そこで負けてしまうのでなく、神様を信じて歩むかどうかということです。
今日の福音書で素晴らしいところはここです。「天地は滅びるが、わたしの言葉は決して滅びない。」つまり天地は滅びる、だから空の太陽が暗くなったり、天も滅びるし、地も滅びる。この世にあるものは全て滅んでいく。様々な苦しみや何かの力が働いて、滅びに向かっていくわけですけれども、唯一イエス様の言葉は決して滅びない。イエス様が語っておられる。それは真実で、これこそがわたしたちが寄って立つべき真理だと思います。イエス様の言葉は一つは愛することであり、希望しているということであり、勇気を持って生きていくということも含まれていると思います。
このフランスの人々はテロでがっかりしているでしょうし、でも根本にあるのは明らかにシリヤやイラクの混乱の中で苦しんでいる人々の苦しみや、その背景にもだいぶあると思います。
多くの混乱や苦しみがあるということも認めなければならない現実です。でもその現実を超えていくさらに確かなものは、イエス様の言葉です。イエス様の言葉に従って、生きていく時にこそ、わたしたちがさまざまな苦難や捕われや、悲しみや憎しみをあるいは呪いを乗り越えていけるのではないかと思います。
わたしたちがいつもイエス様の言葉により頼んで、あるいはイエス様の言葉に自分の軸足をおいて、必ずそこから出発して、イエス様の言葉においてわたしたちが歩んでいけるように、また今日のミサで心を新たにしたらよいと思います。
そしてこの1週間をイエス様の言葉、変わらない滅びていくしかないイエス様の言葉に、わたしたちの全幅の信頼をおいて、歩んでいけるように、このミサでお祈りしたいと思います十

☆。・:☆:・゚☆。・:☆:・゚☆。・:☆:・゚☆。・:☆:・゚☆。・:☆:・゚☆。・:☆:・゚☆。・:☆:・゚☆。・:☆:・゚☆。・:☆:・゚☆

第一朗読 ダニエル書 12章1-3節

 その時、大天使長ミカエルが立つ。
 彼はお前の民の子らを守護する。
 その時まで、苦難が続く
 国が始まって以来、かつてなかったほどの苦難が。
 しかし、その時には救われるであろう
 お前の民、あの書に記された人々は。
 多くの者が地の塵の中の眠りから目覚める。
 ある者は永遠の生命に入り
 ある者は永久に続く恥と憎悪の的となる。
 目覚めた人々は大空の光のように輝き
 多くの者の救いとなった人々はとこしえに星と輝く。

第二朗読 ヘブライ人への手紙 10章11-14.18章

 すべての祭司は、毎日礼拝を献げるために立ち、決して罪を除くことのできない同じいけにえを、繰り返して献げます。しかしキリストは、罪のために唯一のいけにえを献げて、永遠に神の右の座に着き、その後は、敵どもが御自分の足台となってしまうまで、待ち続けておられるのです。なぜなら、キリストは唯一の献げ物によって、聖なる者とされた人たちを永遠に完全な者となさったからです。罪と不法の赦しがある以上、罪を贖うための供え物は、もはや必要ではありません。十

☆。・:☆:・゚☆。・:☆:・゚☆。・:☆:・゚☆。・:☆:・゚☆。・:☆:・゚☆。・:☆:・゚☆。・:☆:・゚☆。・:☆:・゚☆。・:☆:・゚☆

                      2015 年 11 月 15 日(日)
                       年間 第 33 主日 B 年
                       カトリック麹町教会 主聖堂於
                        イエズス会 英 隆一朗 助任司祭ミサ説教記